ミニチュア好きの心を鷲掴みにする、軽井沢の「エルツおもちゃ博物館」。
先日、軽井沢にある「エルツおもちゃ博物館」を訪れた。300年以上の歴史をもつというドイツ・エルツ地方の木製おもちゃを中心に、ヨーロッパの玩具やデコレーションを収集・展示している施設だ。エルツとは鉱石の意味で、チェコとの国境になっているエルツ山地には錫や銀など豊富な資源があり、周辺は大いに栄えた。その鉱業が衰退した際に、水車や工具や森林資源をおもちゃづくりに転用したのだという。特に中心地であるザクセン州ザイフェンにはいまも100を優に超える家族経営の工房が軒を連ね、おもちゃの村として世界に知られている。かの地にあるおもちゃ専門の博物館の姉妹館として1998年にオープンしたのが、この博物館だ。
ちなみにザイフェンからクルマで1時間ほど、同じエルツ山地にあるグラスヒュッテも鉱業から時計づくりに転じた村。A.ランゲ&ゾーネをはじめとする名だたる時計ブランドが現在も工房を構えている。
展示館には、職人たちが木を彫り着色した可愛らしい人形がずらり。鉱業が生業だった地らしく鉱夫を模したもの、宗教や伝承にちなんだもの、子どものためのおもちゃなど、さまざまな年代の多様な成り立ちの木製の品が並んでいた。小さな村を模したジオラマ、室内を丁寧につくり込んだおもちゃなど、模型好き・ミニチュア好きにはたまらないものばかり!
季節柄、企画展示がなされていたクリスマスにまつわる装飾品やおもちゃも美しかった(『2020年度 秋冬展 天使が歌うクリスマス。』は2021年1月11日まで)。たとえば、キャンドルで温められた空気がプロペラを回し、その力が伝わり台座も回転する「クリスマスピラミッド」。エルツ地方の日常が再現されていたり、キリスト生誕の物語が描写されていたり、聖歌隊が合唱をしていたりする。
ひとつ一つの人形の手仕事ならではの味わいが素敵なのはもちろんのこと、いくつもの人形や背景や小道具を組み合わせてつくり出す世界観が素晴らしく、文字通り時間を忘れて見入ってしまった(私が迷子となっていたようで、子どもが探しに来た)。
想定時間をたっぷりオーバーして展示館を後にし、エントランス付近のショップへ戻る。でも、お高いんでしょ?と思いきや、目が飛び出るほどの価格というわけでもなかった。ショップにもいろんな商品が陳列されていて、子どもは狂喜乱舞。ここは財布を預かる身として童心には帰らず、つれない大人を演じた。そして度重なる家族会議を経て、シンプルなクリスマスオーナメントをふたつ購入。我が家の派手な(安物の)オーナメントに交じっても、本物ならではの存在感を発揮してくれるに違いない。(編集NS)
エルツおもちゃ博物館・軽井沢